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2005年08月28日
【猪瀬直樹:2/2】 農業は、自在に絵が描けるフロンティア
――著書の中では、江戸時代からの産業史を振り返りつつ
農業を従来とは別の角度から位置付けている点が印象的でした。
猪瀬●
歴史教科書を読むと、
「農民は凶作や飢饉に苦しみ、重い年貢負担にあえぐ」
といった「貧農史観」が書かれています。
あれは、マルクス主義と皇国史観という2つのイデオロギーが形成した固定観念で、
士農工商の身分制度にしても後世に作られたイメージにすぎません。
江戸時代、大阪のコメ相場では、すでに世界初の先物取引が行われていました。
これは世界的に見てすごいことで、平和だから可能だったんです。
異民族に土地を奪われる恐れがない時代だからこそ、先物を取引できたんですね。
ですから江戸時代の農民は作るだけでなく、「売る」ことを考えていました。
生産から流通、販売までプロセス全体を見て市場経済を生き抜いたんです。
農・工・商に境目などはなくて、田畑を耕しながら、商家に奉公したり、
職人に転じたり、小商いをする人もいた。
農民には商工業のセンスや経営努力が求められました。
――農業そのものにまつわる古い見方を変える必要がありそうです。
猪瀬●
現代の「農業」は、工業と対比する概念としての農業ですよね。
私は、江戸時代の農業は工業だったと思っています。
狭い土地からいかに多くの収穫を得て、売れる商品を生み出すかが問われ、
田畑には職人的な努力が傾注されてきた。
そうした創意工夫が日本のものづくりの伝統となり、
大きなところではトヨタ自動車の「カイゼン」、小さなところでは、
東京・大田区の町工場などに見られる「匠の技」まで、
連綿と続いているわけですよ。
――日本の農産物についても、商品力を見直し、
輸出を視野に入れた取り組みも出てきました。
猪瀬●
日本の農業には今でも、他国に真似のできない
高付加価値な農産物を作る力があります。
今はちょっとまだ手始めに輸出しているといった感じだけど、
今後はもっと輸出しやすい環境が整うはずです。
現在の輸出額は年間1600億円程度ですが、
適切な輸出戦略を立てれば、1兆円も不可能ではない。
農産物だけでなく、人材を海外に送り出すことも考えるべきでしょう。
青年海外協力隊をもう少し違った形で展開するとか、
フリーターやニートを活用できないかとか。
日本の若者の力を海外の農業で生かせるのではないかと思うんです。
――最後に農業に携わる人たちへのメッセージをお願いします。
猪瀬●
やはり今後の経営者には、
どう作るかではなく、どう売るかが求められています。
農業はいかようにも絵が描けるフロンティアになったのだから、
大切なのは、未来を先取りする発想です。
居酒屋チェーンから農業に参入したワタミファームにせよ、
人材派遣のパソナにせよ、色々な入り口が用意されてきたでしょう。
ワタミファームで農業を学び、独立した元OLがいるのですが、
若い女性が農業をやる、理屈やイデオロギーではなくて、
「それが格好いいんだ」という流れができれば、
農業に対する見方も変わると思います。
「ダサいけれども大事な産業」から
「格好よくてもうかる産業」へと変えていく。
そんな波を作り出せれば、農業の魅力はさらに強まりますよ。
(構成・秋山基)
投稿者 eooo01 : 2005年08月28日 17:27